僭越ながら、先に用語の解説とレポートの概説を一般の方向けにしますね。
「免疫」は身体の中の警察のようなものです。リンパ球、マクロファージ、T細胞など、たくさん働いています。おおまかにいうと白血球などです。
「免疫寛容」は、身体の中の警察が寛容になる、おおらかになる、あまくなる、ぬるくなることです。対象を間違えたり厳しすぎると、スギ花粉や小麦など反応しなくてもいいものに反応して大変なことになります。是々非々、良いものは許す、区別が大事です。
「免疫回避」は、免疫を回避すること、免疫を免れることです。
では寛容であれば良いのでしょうか? 寛容が過ぎると、どうなるのでしょう? 警察が悪者を寛容して悪者が追求を免れると、悪は増え栄えます。 ウイルスや病原菌が免疫を免れると身体を侵し、ガン細胞を寛容して増えると癌になります。
このレポートは、新型コロナワクチンを頻回接種すると、免疫が勘違いをしたり、寛容になり過ぎる可能性を示唆しています。警察が対象を間違えたり寛容過ぎて野放しになった世界をご想像下さい。 COVID-19 mRNAワクチンは頻回接種により「打っても効かない」どころか、コロナウイルスを予防するつもりで打ったワクチンによって、逆に、コロナウイルスを予防できなくなる、癌などになりやすくなる、という可能性のお話です。
↓↓(公)東京都医学総合研究所からのコロナワクチンの危険性に関するレポートです。↓↓
※世界各国で行われている研究成果をご紹介しています。研究成果に対する評価や意見は執筆者の意見です。
一般向け 研究者向け
2023/10/12
IgG4関連疾患の危険因子としてのCOVID-19 mRNAワクチン
文責:橋本 款
今回の論文のポイント
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチン接種により血清IgG4が上昇し、IgG4関連疾患(IgG4-RD)*1の病態を促進する可能性があることから、COVID-19 mRNAワクチンはIgG4-RDの危険因子として要注意です。
実際、複数回のmRNAワクチン接種により、IgG4-RDが新たに発症したという症例や、1回のmRNAワクチン接種でIgG4-RDが再燃したという症例の報告が増えています。現時点で、幸いな事に重篤には至っていないようです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月に中国のウーハンで勃発して以来、SARS-CoV-2のパンデミックは世界中に広がりましたが、mRNAワクチンによる予防が功を奏したお蔭もあり、現在、COVID-19は収束しつつあります。これに関連して、mRNAワクチンの開発に寄与した米国ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授とドリュー・ワイスマン教授の2人が2023年のノーベル生理学・医学賞*2 を受賞しました。
しかしながら、ノーベル賞が授与されたからと言ってmRNAワクチンに問題はないという保証はありません。実際、mRNAワクチンの接種に伴い、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛などの副反応が、低頻度ながら心筋炎、心膜炎、血栓症など重篤な合併症が観察されて来ました。また、前回(mRNAワクチンの反復接種はSARS-CoV-2の免疫回避を促進する〈2023/10/03掲載〉)で述べましたように、頻回のワクチン接種により免疫グロブリンのIgG4が上昇し、免疫寛容*3 状態が引き起こされる結果、SARS-CoV-2の免疫回避*4 が増強したり、自己免疫疾患や癌が促進される可能性が論じられました。
これに一致して、最近、SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンを接種した後にIgG4-RDを発症(あるいは、再燃)したという症例報告がいくつか発表されていますので、今回は、そのうち日本の内科雑誌;Internal Medicineに掲載された2報(文献1, 2)を紹介致します。
文献1.
Case Reports;IgG4-related Disease Emerging after COVID-19 mRNA Vaccination
Satsuki Aochi et al.,Intern Med 2023, 62:1547-1551.
文献2.
Case Reports;Immunoglobulin G4-related Hepatopathy after COVID-19 Vaccination
Masahiro Kuno et al.,Intern Med 2023, 62:2139-2143.
【文献1: 発症例】
78歳女性BNT162b2(ファイザー)2回目接種後、2週間以内に両側の顎下腺の腫脹に気づき来院した。全身症状良好で関節リューマチの既往歴は無かった。
血液検査でIgG4値1,100mg/dl:(正常値11-121 mg/dl)、全身のcomputed tomography(CT)で両側性に腫大した顎下腺の所見のみ、18F-fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(FDG-PET)で腫大した膵臓の所見が得られ、IgG4-RD*4'の診断を受けた。
治療;プレドニソロン30mg/dayで顎下腺の腫脹は速やかに消失し、血清IgG4値は徐々に下降した。4ヶ月後のCT、FDG-PETで顎下腺、膵臓の腫脹は見られなかった。
【文献2: 再燃例】
84歳女性80歳の時に肺の多発性結節*5で来院していた。この時はリンパ管の腫脹と顎下腺の腫脹、血液検査でIgG4値上昇(2,540 mg/dl)、さらに口唇生検*6の結果、IgG4/CD138*7比が70%以上のため、IgG4-RDの診断を受けていた。しかしながら、症状は軽度のため、治療しないでフォローアップしていた。
84歳時に(今回)、BNT162b2ワクチン1回目接種後1日目から、掻痒感、食欲不振、悪心がして、それらの症状は徐々に悪化したので7日目に入院した。
血液検査でIgG値上昇(6,032mg/dl:正常値861-1,747mg/dl)、IgG4値上昇2,934 mg/dl)、肝逸脱酵素高値AST113 U/L(正常値13-30 U/L)、ALT85 U/L(正常値7-23 U/L)、γ-GTP107 U/L(正常値9-32 U/L)。
全身のCTで腫大化した肝臓、脾臓、リンパ管、顎下腺(両側性)が見られたが、膵臓の腫大は無かった。
肝生検;門脈域はよく区画化され、門脈周囲の炎症は無かった。胆管は正常で、IgG4-RDによる胆管の狭窄や炎症は無かった。免疫染色でIgG4陽性の形質細胞の増加が見られた。類洞の中はリンパ球の軽度増加し、マクロファージが集積しており、壊死があると思われた。肝小葉中心の炎症は無かったので、IgG4-関連自己免疫性肝炎ではなく、IgG4-関連肝障害と診断された。
積極的な治療を行わなかったが、自然に寛解し、現在、経過観察中である。
用語の解説
*1.IgG4関連疾患(IgG4-related disease: IgG4-RD)
IgG4-RDは21世紀になって日本より提唱された新しい疾患であり、東京都立駒込病院も研究・診療に中心的な役割を担っている。 主に膵臓、唾液腺、涙腺、腎臓、血管/後腹膜などを含む全身のいろいろな臓器が腫れたり、硬くなったりする原因不明の病気で、何らかの免疫異常が関わっていると考えられている。多くの患者さんでみられる特徴的な免疫異常の一つとして、IgG4が血液中で高値であること、おかされた臓器にIgG4を産生する形質細胞が数多く浸潤していることが挙げられる。膵臓や腎臓、血管/後腹膜に病変を持つ患者さんでは、一般に高齢の男性に比較的多くみられる。
*2.2023年のノーベル生理学・医学賞
スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を、メッセンジャーRNAの技術による新型コロナウイルスワクチン開発を可能にした発見により、米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授とドリュー・ワイスマン教授の2人に授与すると発表した。mRNAを治療に利用するうえで免疫システムが炎症反応を起こすことが大きな障害だったが、カリコ氏はこれを防ぐ方法を発見。ワイスマン氏との協働によりワクチン開発の道を開いた。ノーベル賞の選考委員会は、「mRNAがどのように免疫システムと相互作用するかに関する理解を根本的に変え、パンデミック下で社会に重要な影響を及ぼした基礎科学の発見を評価した」と説明した。
*3.免疫寛容(immune tolerance)
過去に免疫応答(反応)を起こしたことがあったり、免疫応答を起こす可能性のある特定の抗原に対して、免疫応答を起こさない状態を指す。免疫寛容が成立する背景には、過剰な免疫応答を抑制的に制御しているT細胞(regulatory T cell)が関与している可能性が高く、近年、自己免疫疾患などを対象に免疫寛容を人為的に誘導する治療法の開発が進んでいる。
*4.免疫回避(immune evasion)
過去に免疫応答(反応)を起こしたことがあったり、免疫応答を起こす可能性のある特定の抗原に対して、免疫応答を起こさない状態を指す。免疫寛容が成立する背景には、過剰な免疫応答を抑制的に制御しているT細胞(regulatory T cell)が関与している可能性が高く、近年、自己免疫疾患などを対象に免疫寛容を人為的に誘導する治療法の開発が進んでいる。
*4'.IgG4関連疾患(IgG4-related disease: IgG4-RD)
IgG4-RDとは、主に膵臓、唾液腺、涙腺、腎臓、血管/後腹膜などを含む全身のいろいろな臓器が腫れたり、硬くなったりする原因不明の病気で、何らかの免疫異常が関わっていると考えられている。多くの患者さんでみられる特徴的な免疫異常の一つとして、IgG4が血液中で高値であること、おかされた臓器にIgG4を産生する形質細胞が数多く浸潤していることが挙げられる。膵臓や腎臓、血管/後腹膜に病変を持つ患者さんでは、一般に高齢の男性に比較的多くみられる。
*5.肺多発性結節
CTで見つかる肺結節の96%は良性であり、放置してよいものである。 しかし、1回のCTでは良性とは診断確定できず、3ヶ月毎にCTを撮って経過を観察して、良悪性をはっきりさせるために気管支鏡検査や手術をする事もある。
*6.口唇生検
口唇生検は下唇腺を局所麻酔下に摘出して病理組織検査を行う方法である。5分程度で終了する簡単な検査であるが、高度のシェーグレン症候群患者では下唇腺が萎縮しているため見つけにくいことがある。
*7.CD138
形質細胞のマーカー。CD138は、ヘパラン硫酸鎖を介して、ケモカイン、成長因子、セレクチンおよびその他の接着分子を含む、炎症に関与する広範囲の分子に結合し、その活性を調節する。また、CD138は細胞基質への接着に関与しているコラーゲン、フィブロネクチン、トロンボスポンジンおよびテネイシンのレセプターとしても働く。
文献1
Case Reports;IgG4-related Disease Emerging after COVID-19 mRNA Vaccination
Satsuki Aochi et al.,Intern Med 2023, 62:1547-1551.
文献2
Case Reports;Immunoglobulin G4-related Hepatopathy after COVID-19 Vaccination
Masahiro Kuno et al.,Intern Med 2023, 62:2139-2143.
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