うつ病の原因遺伝子の発見(HHV-6の潜伏感染) ――― 東京慈恵会医科大学(要約)

2022年05月16日 19:34

東京慈恵会医科大学・ウイルス学講座・近藤一博
【要旨】大規模な遺伝子研究が行われたにも関わらず、ヒト遺伝子の中にはうつ病の原因となる有効な遺伝子は発見されませんでした。我々は、ヒトに寄生する微生物を含む遺伝子群(メタゲノム)に研究対象を広げ、ヒトに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス 6(HHV-6)が持つ、うつ病の原因となる遺伝子 SITH-1 を発見しました。SITH-1は脳のストレスを亢進させることで、うつ病を発症させる作用があり、うつ病と診断されない程度の軽いうつ症状にも影響していました。また SITH-1 は、ヒトを 12.2 倍うつ病になりやすくさせ、79.8%のうつ病患者が影響を受けているという、非常に効果の大きい遺伝子であることも分かりました。
【うつ病の原因遺伝子 SITH-1 の発見】HHV-6 は脳神経に親和性の高いウイルスで、様々な脳神経疾患や精神疾患との関係が予想されているウイルスです。そこで我々は、HHV-6 が嗅球で潜伏感染する際に発現する遺伝子を試験管内の培養細胞を使った実験によって発見して、疾患との関係を調べました。
【SITH-1 の作用】SITH-1 の機能を調べたところ、細胞内へカルシウムを流入させて、アポトーシスと呼ばれる細胞死を誘導することが判りました。また、実験的にマウスの嗅球で SITH-1 を発現させると嗅球が細胞死を起こすことが判りました。さらに、SITH-1 を発現させたマウスは、脳のストレスが亢進し、うつ状態になりました。
【うつ病患者への SITH-1 の影響】簡単な言葉で表すと、SITH-1 はヒトを 12.2 倍うつ病になりやすくさせ、79.8%のうつ病患者が SITH-1 の影響を受けているということになり、これまでに発見されている疾患の原因遺伝子の中でも最大級の影響を持つ遺伝子であると言えます。
【まとめ】我々はこれまでの研究で、SITH-1 発現のもととなる唾液中の HHV-6 が疲労によって増加すること発見しているので、SITH-1 は疲労とうつ病をつなぐ鍵になるかも知れません。また、SITH-1 のうつ病発症に対する影響はとてつもなく強く、今回見つけた発症メカニズムであるストレスの増強だけで説明できるものでは有りません。このため、SITH-1 によるうつ病発症のメカニズムを更に探求することは、うつ病の正体を明らかにし、根本的な治療法の開発に繋がるものと考えられます。

ちなみにテレ朝によりますと、「SITH」の命名はSF映画「スターウォーズ」のシス卿からだそうです。お茶目なところもある先生なのですね。

素人的に大事だと思ったのは、うつ病は、本態性の精神疾患ではなく、職業病でもなく、加齢のせいでもない、感染症の症状だったということです。それも鼻を介したウイルス感染です。
ですから対策は、ワクチンが出る前のコロナ対策とほぼ同じと言えます。
手洗い、うがい、マスクで、ひとに移さない、うつらない。くしゃみや咳を人に向けない。はなをかんで、洟紙はちゃんと捨てる。よく食べ、よく眠り、よく笑い、お外で遊んで免疫機能を活性化する。治療法・予防法に悩む必要はなく、健康生活の王道を生きていれば良かったんです。

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